UP 2009.9.3 HRY
六甲山自然保護センターと初秋の六甲自然観察
■日時:2009.8.30(日) 晴 ■行先:六甲山自然保護センター ノースロード、記念碑台〜ゴルフ場〜ケーブル駅 ■参加:32名 ■案内:六甲山自然案内人の会 坪田義治氏(MNC、シ8期) |
-スケジュール-
9:25〜9:50 阪急六甲→記念碑台(阪急バス)
9:55〜10:05 自然保護センターミーティング
10:10〜12:00 ノースロード自然観察
(自然保護センターで昼食)
12:45〜13:50 MNC研修講座「六甲の生い立ちと自然」 講師:坪田義治氏
14:00〜16:20 記念碑台〜高山植物園〜ゴルフ場〜ケーブル駅 自然観察
16:40〜17:10 ケーブル・神戸市バス→阪急六甲・解散
短い夏。六甲山上はもう涼風が立っています。武庫ネイチャークラブ会員で六甲山自然案内人の会の坪田義治氏の案内で、六甲山の生い立ちと自然について学び、初秋の六甲山の植生を心ゆくまで観察できた一日でした。
T.六甲山のおいたちと自然
1.六甲山の誕生
六甲山は、神戸市、西宮市などの背後にそびえる連山で、そのうち東の譲葉山(526m)から六甲山(931m)、摩耶山(698m)を経て西の再度山(468m)までの東西20kmの地域が国立公園六甲地区に指定されている。中生代の末期から新生代の始めにかけて(約1億年前〜3千万年前)西日本一帯では大量のマグマが噴出し、地下では花崗岩ができた。六甲山地をつくる花崗岩はそのうち8千万年前頃に地下でマグマが固まったものである。3500万年前頃には、河川で運ばれてきた土砂などは固まり、神戸層群の地層ができた。約200万年前になると近畿中央部一帯に六甲変動とよばれる大きな地殻変動が起こり、特に100万年前頃から六甲山の部分が急速に高くなるとともに大阪湾の部分が沈み、現在のような六甲山の山並みが形成された。
2.六甲山の開発
六甲山は、慶応3年(1867年)神戸開港による外国人居留民の手で開発された。その中心人物は英国出身の貿易商A.H.グルームで、明治36年にはわが国最初のゴルフ場「神戸ゴルフ倶楽部」が設立されている。明治初期、神戸に入港した船の上からは雪が積もっているように見えたとも言われている荒廃した六甲山は、明治35年(1902年)に大規模な植林作業に着手、松やヤシャブシを植えることで緑を回復した。
大正から昭和にかけて、阪神電鉄・阪急電鉄による交通網の整備と観光開発で次々とレクレーション施設が整っていった。昭和31年(1956年)瀬戸内海国立公園の一部に編入され、年間観光客は800万人に達したが震災後は激減、現在は600万人にまで回復したものの、別荘や企業の保養施設の閉鎖も多い。近年は地球温暖化の影響著しく、かつては氷の切り出しやアイススケートで賑わいを見せていた多くの池は、薄氷が張るのみである。アイスロードとはかって氷の運搬に使われた道である。将来に向け、「自然環境の保全と自然を活用した適正な利用」を掲げ、新たな魅力を創出するための模索が続いています。
3.六甲山の植生
六甲山には約1700種の植物が自生し、近畿地方の山々に比べ植生が豊かである。
貴重な植生・特別景観:@六甲山のブナ林、イヌブナ林 A東お多福山のススキ・ネザサ群落 B蓬莱峡などのバッドランド地形 Cヒカゲツツジ:崖などに生育し美しい花をつけるが、自然公園法による採取制限植物として保護されています。
(研修講座および資料から)
自然保護センターからの展望
―六甲山自然保護センター―
瀬戸内海国立公園六甲地区の中心地に設置されたビジターセンターで、自然公園利用者の便宜を図る設備。山の生い立ちや動物・植物など六甲山を取りまく自然を、写真パネルや、標本などで解説をするとともに、研修、休憩の場を提供、自然とのふれあいや利用案内、資料の配布など行っている。分館の「県立六甲山ガイドハウス」では、ビデオやPCで山の情報が得られる。土・日・祝日にはガイドボランテイア「山の案内人」が自然観察会を行っています。
六甲山自然保護センター |
六甲山のおいたちと自然について講義(坪田氏) |
テキスト 昭和11年の六甲山地図 |
U.ノースロードの自然観察 10:10〜12:00
自然保護センターでミーティングの後、坪田義治氏(MNC、シ8期)の案内で、保護センターを取り巻くノースロードの自然観察を行った。ネジキとアセビの対比、その名のとおり沢を覆うように枝や葉を伸ばすタンナサワフタギ、またツツジ科の中で一番遅くに咲くホツツジが 穂状に伸びたツツジ科らしからぬ淡紅色の花をつけてあちこちで迎えてくれた。また、ヤマナシ、エゴノキ、クロモジ、チゴユリなどの実も春の花をしのんで楽しんだ。
石垣の割れ目に生える植物に思いをよせる
タンナサワフタギ
分水界 ここは加古川の源流
観察リスト(1) (アイウエオ順 ○草本) 観察:松生、肥塚、平山
1 アカシデ カバノキ科 24 チジミザサ イネ科 ○ 2 アキノウナギツカミ タデ科 ○ 25 ツユクサ ツユクサ科 ○ 3 アキノタムラソウ シソ科 ○ 26 ツリバナ ニシキギ科 4 アセビ ツツジ科 27 ドウダンツツジ ツツジ科 5 ウスギヨウラク ツツジ科 28 ネジキ ツツジ科 6 ウラジロノキ バラ科 29 ノハタカラクサ ツユクサ科 ○ 7 エゴノキ エゴノキ科 30 バイカウツギ ユキノシタ科 8 オトコヨウゾメ スイカズラ科 31 バイカツツジ ツツジ科 9 キクバヤマボクチ キク科 ○ 32 ヒヨドリバナ キク科 ○ 10 キザクラ バラ科 33 フサフジウツギ フジウツギ科 11 クサアジサイ ユキノシタ科 ○ 34 フタリシズカ センリョウ科 ○ 12 クロモジ クスノキ科 35 ブナ ブナ科 13 ゲンノショウコ フロウソウ科 ○ 36 ベニドウダン ツツジ科 14 コアジサイ ユキノシタ科 37 ボタンヅル キンポウゲ科 ○ 15 コウヤボウキ キク科 38 ホツツジ ツツジ科 16 コウライテンナンショウ サトイモ科 ○ 39 ミズヒキ タデ科 ○ 17 コバノガマズミ スイカズラ科 40 ミソハギ ミソハギ科 18 シソバタツナミ シオ科 41 ミヤコザサ イネ科 ○ 19 センニンソウ キンポウゲ科 ○ 42 ヤマアジサイ ユキノシタ科 20 ゼンマイ ゼンマイ科 ○ 43 ヤマシグレ スイカズラ科 21 ダイコンソウ バラ科 ○ 44 ヤマジノホトトギス ユリ科 ○ 22 タンナサワフタギ ハイノキ科 45 ヤマナシ バラ科 23 チゴユリ ユリ科 ○ 46 リョウブ リョウブ科
マイカメラ(1)
@ゲンノショウコ
Aドウダンツツジ
Bヤマナシ
Cチゴユリ
Dアキノタムラソウ
Eヤマジノホトトギス
Fコアジサイ
Gクサアジサイ
Hクロモジ
Iミズヒキ
Jダイコンソウ
Kツユクサ
Lボタンヅル
Mフサフジウツギ
Nヒヨドリバナ
V.自然保護センター〜高山植物園〜ゴルフ場〜ケーブル駅 14:00〜16:20
午後の研修後、自然保護センターから六甲山ガイドハウスに立ち寄り、六甲山小学校前を経てヴォーリスの建てた山荘、氷を切り出した瓢箪池の前を通り、舗装のない道を歩き、高山植物園へと出た。植物園横のバス道から目線で樹冠を見て、ゴルフ場の間を通ってケーブル駅まで急いだ。
六甲山小学校通りのスギとヒノキ |
氷切り出し用の池(瓢箪池) |
高山植物園への道 湿原を行く |
わが国最初のゴルフ場「神戸ゴルフ倶楽部」は手作りのコースとレトロなクラブハウスが趣を添える。ここには六甲には珍しいカナクギノキがあります。ケーブル駅横の石垣にはセンボンヤリの閉鎖花が宝塚の自然の家で見た春の姿とは全く違った花として見られました。
ゴルフ場を通り抜けて
大阪湾の展望
ケーブル山上駅
観察リスト(2) 観察:松生、肥塚、平山
1 アリマウマノスズクサ ウマノスズクサ科 ○ 14 シロヤマブキ バラ科 2 イタドリ タデ科 ○ 15 センボンヤリ キク科 ○ 3 カナクギノキ クスノキ科 16 ツリフネソウ ツリフネソウ科 ○ 4 カワラナデシコ タデ科 ○ 17 ノギラン ラン科 ○ 5 キツリフネ ツリフネソウ科 ○ 18 ノササゲ マメ科 ○ 6 ギンミズヒキ タデ科 ○ 19 ハコネウツギ ウツギ科 7 クマシデ カバノキ科 20 ヒマラヤズミ バラ科 8 クマノミズキ ミズキ科 21 フタバアオイ ウマノスズクサ科 ○ 9 ケヤマハンノキ カバノキ科 22 ホソバナナカマド バラ科 10 コウヤマキ コウヤマキ科 23 マユミ ニシキギ科 11 コハウチアカエデ カエデ科 24 メタカラコウ キク科 ○ 12 サンショウバラ バラ科 25 ヤマボウシ ミズキ科 13 シチダンカ ユキノシタ科 26 ワレモコウ バラ科 ○
マイカメラ(2)
@シチダンカ
Aマユミ
Bノササゲ
Cホツツジ
Dシロヤマブキ
Eヤマボウシ
Fサンショウバラ
Gメタカラコウ
Hコハウチワカエデ
Iクマシデ
Jツリフネソウ
Kキツリフネ
Lイタドリ
Mケヤマハンノキ
Nセンボンヤリ
自然保護センター前にて
六甲山自然案内人の会 坪田義治氏の懇切丁寧なガイドに感謝申し上げます。ありがとうございました。
文/坪田、平山 写真・編集/平山
武庫ネイチャークラブ